*

日本数学会

2014年度年会

TOP Page会員用のページ > 学術的会合 >2014年度年会(学習院大学) >数学連携ワークショップ

数学連携ワークショップ
---生命科学、材料科学における数理---

日時
3月16日(日)9:30-12:00
会場
学習院大学北1号館201教室
主催
文部科学省、統計数理研究所
共催
日本数学会
プログラム
9:30--12:00背景説明(文部科学省)
9:40--10:10発表1「転写機構解明のための数理モデルとシミュレーション」
(大田佳宏 東京大学大学院 数理科学研究科 数理科学連携基盤センター/生命動態システム科学推進拠点/特任准教授)
10:10--10:20質疑応答
10:20--10:50発表2「Mixing time of molecules inside of nanoporous gold」
(Daniel M. Packwood 東北大学 原子分子材料科学高等研究 機構 助教)
10:50--11:00質疑応答
11:00--11:30発表3「生物と数学とロボットと」
(小林亮 広島大学大学院理学研究科 数理分子生命理学専攻/生命動態システム科学推進拠点/教授)
10:30--10:40質疑応答
11:40--12:00総合討論

発表1「転写機構解明のための数理モデルとシミュレーション」

発表者
大田佳宏(東京大学大学院 数理科学研究科 数理科学連携基盤センター/生命動態システム科学推進拠点/特任准教授)
講演概要
遺伝子の転写とは、DNA 配列を鋳型に RNA polymerase II (RNAPII)という酵素によって遺伝子が読まれ RNA が合成される現象を指し「生命の基本原理」とも考えられている。 一方で、転写の生成物である RNA は時間変異性が高く微小不均一性を持つため、細胞を用いた実験において高時間分解能の現象観察を行うことは難しいのが現状である。 そこで、観察不可能な領域における高分解能の検証を可能とし、構築したモデルの再現性を保証するため、超離散系シミュレーションなどの数理科学的手法が必須となる。 ここでは、セルオートマトンを用いた転写の数理モデルを構築し遺伝子の転写機構を解明するための研究について紹介する。
略歴
博士(数理科学)(東京大学)。
1997 年 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。IBM 東京基礎研究所、日立製作所中央研究所、東京大学先端科学技術研究センターを経て現職。 現在は、文部科学省の生命動態システム科学推進拠点における「転写の機構解明のための動態システム生物医学数理解析拠点」にて、遺伝子の転写機構の数理モデリングとシミュレーションの研究に従事。

発表2「Mixing time of molecules inside of nanoporous gold」

発表者
Daniel M. Packwood (東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 助教)
講演概要
Nanoporous gold (AuNP) is a material that consists of metallic gold and a disordered network of nanometer-sized pores. AuNP is known to be a highly active catalyst for many chemical reactions [1]. The catalytic activity of AuNP partially depends upon how quickly molecules can travel through the pores and reach the chemically reactive sites [2]. Using three-dimensional imaging data collected from a real AuNP sample [3], we propose a new class of graphs for modeling the pore network of AuNP. The graphs in this class are created by combining many copies of a smaller graph S together in a particular way. We then estimate the mixing time of a random walk on a graph from this class using the spectral properties of the graph S. The mixing time can be used to measure the rate of diffusion of molecules through the porous network of AuNP. Our estimate of the mixing time is useful for understanding how the ‘local’ connectivity of the pores affects the diffusion rate through the entire pore network. This information can help to identify network structures for nanoporous metals that allow for high molecular diffusion rates and high catalytic activities for real applications [4].
This is joint research with experimental researchers T. Jin, T. Fujita, M.W. Chen, and N. Asao (WPI-Advanced Institute for Materials Research, Tohoku University).
References
  • [1] V. Zielasek et al. Angew. Chem. Int. Ed. 45, 2006, 8241.
  • [2] T. Fujita et al. Nature. Mater. 11, 2012, 775.
  • [3] T. Fujita et al. Appl. Phys. Lett. 92, 2008, 251902.
  • [4] D. M. Packwood et al. Submitted. Preprint available at http://packwood.web.fc2.com/AuNP27dec.pdf
略歴
2008 年、ニュージーランドの Canterbury 大学を卒業。主要専攻科目は化学、副専 攻として数学を学ぶ。2010 年、Canterbury 大学にて Ph.D(理論化学)を取得。その後 京都大学大学院理学研究科(化学専攻)における JSPS 特別研究員を経て、2012 年より、東北大学原子分子材料科学高等研究機構の「インターフェイスユニット」にて助教をつとめる。確率論・確率過程などの数学理論の化学の問題への応用を軸に研究 を行っている。

発表3「生物と数学とロボットと」

発表者
小林亮 (広島大学大学院理学研究科 数理分子生命理学専攻/生命動態システム科学推進拠点/教授)
講演概要

 動物の運動はしなやかであり、かつ前もって予測できない環境下でもタフに動き回ることができる。動物のロコモーションを「力学」と「制御」の観点から理解し、本物の動物のようにしなやかにタフに動くことのできるロボットを作りたい。

 その夢に向けて、数学者と生物学者とロボット工学者からなるチームを作った。ここで、キーとなる概念は「自律分散制御」である。大自由度をもつ身体を不確定な環境に対しリアルタイム対応させることは、現在主流の集中制御のみでは不可能である。我々は、究極の自律分散系とも言うべき生物「真正粘菌変形体」に立ち返り、「齟齬関数」という概念を抽出し、自律分散制御の設計スキームを提案した。それを出発点として、より高等な動物のロコモーションの理解とロボットによる再現を試みてきた。

 本講演では、ヘビ型ロボットや4脚ロボットなどの事例と、そこから得られる知見を紹介したい。

略歴
京都大学理学部数学科卒業後、京都大学大学院工学研究科数理工学専攻に進学。同博士課程を中退後、広島大学理学部助手、龍谷大学理工学部講師、北海道大学電子科学研究所助教授を経て、2004 年より広島大学大学院理学研究科教授。2002 年あたりまでは、結晶成長に代表される自然界における自発的構造形成を主な研究対象として、フェーズフィールド法の開発などを行ってきた。その後は 生物に興味が移り、粘菌の研究を行っている(なぜか、イグ・ノーベル賞受賞)。2008 年より始まったCREST プロジェクトでは、動物の運動と制御についての研究を行ない、最近は生命システム科学推進拠点「核内クロマチン・ライブダイナミクスの数理研究拠点形成」に参加している。