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日本数学会

理事長からのご挨拶

時代の潮流と日本数学会

prof.kozono

日本数学会 理事長小薗 英雄

大学を取り巻く環境は、この20年間で大きく変遷しました。90年代前半に大学設置基準の大綱化に伴って教養部が廃止され、大手の国立大学を中心に大学院重点化が実施されました。それに伴って大学院博士後期課程の学生定員が増員されましたが、博士号取得後のポジションが問題となり、ポストドクター等一万人支援計画が打出された訳です。その後、2004年に国立大学は独立行政法人化を経て、従来の国家公務員の総定員法の枠組みに縛られることなく、任期付き教員ポストを大幅に増加しました。実際、独法化当時、護送船団方式からの脱却が声高に叫ばれ、それ以降はCOEやWPI等に象徴される様に、私立大学をも巻き込んで、各大学が競争的外部資金を獲得することを余儀なくされ、今日に至っています。特に現在は、法人化以前のような任期のない助教や助手のポストは僅少で、若手研究者の多くは、まずこれらの競争的外部資金によるポストドクターポジションに就き、3年から5年のスパンで任期のない職を見つけるということが一般的となっています。

このようなここ10年以上続く厳しい大学でのアカデミックポジションの状況ではありますが、平成27年度文部科学省委託事業「数学・数理科学を活用した異分野融合研究の動向調査」の事業の一端として同年度に日本数学会が実施したアンケート調査によれば、140人の回答の中、数学・数理科学関係の専攻で学位取得後に非アカデミックに進んだ者は12%(17名)に過ぎませんでした。一方、アメリカの状況は、同じく非アカデミックを進路に選んだ割合は30%でした。少子化が加速する中で、今後大学の規模は縮小に向かうことは想像に難くありません。それ故、数学・数理科学で博士号を取得した若手研究者は、アカデミックポジションだけではなく、企業に職を求めることも将来の選択肢として考えて欲しく思います。

日本数学会では、平成27年度から社会連携協議会を発足させ、数学・数理科学の研究者・大学院生と産業界との出会いの場を提供するイベント「数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会」を開催し、人材育成事業にも貢献しています。この春に九州大学IMIが幹事拠点となって文部科学省委託事業(H29〜34年度)「数理アドバンスプラットフォーム」が採択されたことはとても喜ばしいニュースです。同委託事業では諸科学・産業と数学・数理科学研究者との協働による研究の推進が強く打ち出されています。そこで、ジャーナルや数学通信などの出版事業、年会・総合分科会、MSJ-SIなどの学術的会合の開催事業とそれに付随する学会賞の表彰事業、国際数学連合をはじめとして海外の数学関連の学術団体との国際交流事業等に代表される日本数学会の従来の活動に加えて、数学と異分野との融合で新たな学問領域を創設し、産業界にも多くの人材を輩出する事業にも貢献することが今まさに本会に求められていることではないでしょうか?

このような現代の数学を取り巻く潮流の中で微力ながらも尽力したく思います。皆さまのこれまでのご支援、ご援助に厚くお礼申し上げるとともに、より一層のご指導をお願い申し上げます。