日本数学会

広報委員会

2007年度日本数学会賞秋季賞


2007年度日本数学会賞秋季賞は

舟木 直久 氏(東京大学大学院数理科学研究科教授)
「大規模相互作用系の確率解析の展開」
により授賞されました。

 なお授賞式は以下の次第で開催されました。

日時
2007年9月22日14:45--15:15
場所
東北大学(川内北キャンパス)マルチメディア棟M206
また、記念講演が授賞式に引き続き、以下の次第で開催されました。
日時
2007年9月22日15:30--16:30
場所
東北大学(川内北キャンパス)マルチメディア棟M206

舟木氏の業績紹介は、準備ができ次第、「数学」誌上および本会のホームページ上で行う予定です。


授賞理由

引力や磁力のように、個々の粒子対の相互作用が単純な関数で与えられても、粒子の個数が膨大になれば、粒子系全体の相互作用は極めて複雑なものになります。そして、大局的には、新しい様相が出現します。このような大規模相互作用系の構造を、スケール極限を用いて理解することが、舟木氏の研究テーマです。このスケール極限は、流体力学極限とよばれる時空間の極限操作で、ミクロな段階からマクロを記述する非線形微分方程式を導出するものです。

舟木氏は、確率偏微分方程式、およびその特異極限による相分離の導出、格子気体の平衡揺動問題、格子気体からのStefan問題の導出、分数巾ラプラシアンをもつBurgers方程式の研究など、数多くの成果を上げてきました。今回、受賞の対象となったのは、1997年のSpohn氏との共同研究から始まった、Ginzburg-Landau∇ φ界面モデルに関する一連の研究と、相互作用ブラウン粒子系の低温極限の研究です。

Ginzburg-Landau∇ φ界面モデルは、界面を格子の上の連続なスピン(実数)で表現したモデルで、連続スピンを持つIsingモデルの一種です。定常状態を扱う静的問題と、さらにその時間発展を考察する動的問題に大別されますが、舟木氏は後者を主に研究しています。

上述の流体力学極限は、大数の法則に対応します。中心極限定理に対応する平衡揺動問題、さらに、流体力学極限に付随する大偏差原理が基本的な問題です。

Ginzburg-Landau ∇ φ界面モデルの流体力学極限を示すためには、まずミクロな系の定常分布を、完全に特徴づける必要があります。ここで、定常分布が長距離相関を持つという困難さがあったのですが、舟木氏は、これを確率解析による鮮やかな手法で解決し、更に、流体力学極限を証明し、動的界面モデルの研究の口火を切りました。現在、この定常分布は、Funaki-Spohn状態と呼ばれています。 その後、舟木氏は西川氏と共に、流体力学極限に関する大偏差原理を証明し、付随するレート関数の明快な表現を得ました。なお、平衡揺動問題は、Giacomin-Olla-Spohnによって解決されました。

次に舟木氏は界面が壁上にある場合を研究しました。このモデルでは、壁の効果により界面が押し上げられるエントロピー反発という現象が見られます。舟木氏は、流体力学極限を示し、極限として障害物を持つ非線形偏微分方程式を得ました。また、Olla氏と共に平衡揺動問題を解決し、非ガウス的な極限を得ました。

静的問題については、界面の大偏差原理を坂川氏と解決し、また、Bolthausen氏達と 弱いピン留め効果をもつガウス型ランダムウォ−クのスケール極限について、次元の違いを反映した鮮やかな結果を得ました。

舟木氏は、東海林氏と、FKG不等式やBrascamp-Lieb不等式という統計力学あるいは場の量子論における重要な不等式に、確率解析的手法による、簡明な別証明を与えました。また、壁上の界面モデルを研究する上で、舟木氏は、パス空間の反射壁ブラウン運動を考察し、石谷氏と共に、パス空間の領域の部分積分公式を得ました。この部分積分公式を表現する上で、Bessel過程に対するWiener型確率積分(Bessel-Wiener積分)を構築する必用が生じ、Yor氏その他との一連の研究でこの積分を確立しました。

Spohn氏との共同研究で幕を開けた舟木氏のGinzburg-Landau ∇φ界面モデルの研究は、このように無限次元の反射壁ブラウン運動や、古典的なWiener積分ともつながる豊穣なものとなりました。

相互作用ブラウン粒子系の低温極限の研究では、2体間距離がaのときに最小値を取る相互作用ポテンシャルをもつ粒子系において、低温極限の下で、粒子系がミクロには間隔aで配置される堅牢な結晶構造を形成することを示しました。さらにマクロスケールにおいて、結晶の運動を適当な時間変更の下で完全に決定しました。

以上に述べました舟木直久氏の大規模相互作用系に関する多彩な研究業績は、日本数学会賞秋期賞に、誠に相応しいものです。

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最終更新日: 19 March 2008