ロゴ日本数学会  2016年度日本数学会賞出版賞

2016年度日本数学会賞出版賞

2016年度日本数学会賞出版賞は以下の方に授賞されます。

秋山仁
秋山仁氏は,教育・研究の経験を生かした参考書・教科書,テレビ・ラジオ番組に関連したテキスト,グラフ理論・離散数学の専門書などの執筆により,小中学生を含めた広範囲の読者に数学の魅力や重要性を分かりやすく伝えてこられた.30年以上にわたる活動の中で著された, 他に類例をみないほど多数の著作の中には,Mari-Jo Ruiz 氏との共同の著作 A Day's Adventure in Math Wonderland (World Scientific 2008) のように,複数の言語に翻訳され,世界中の人々に愛読されているものも含まれている.秋山氏の出版活動を通じた貢献は出版賞に相応しいものである.
内村直之 『古都がはぐくむ現代数学―京大数理解析研につどう人びと』
本書は,京都大学数理解析研究所を舞台として,創立から半世紀にわたって繰り広げられてきた,戦後の日本の数学者たちによる研究最前線での活動の様子を,いきいきと描き出した書物である.綿密な取材と深い数学の理解にもとづいて書かれた本書は,現代数学の最前線の様相を,一般読者のみならず,数学をまなぶ学生たちや数学研究者からも,読み応えのある書物として迎えられている.本書は,日本の数学啓蒙書の新しい地平を切り拓いており,出版賞に相応しいものである.
高橋礼司
高橋礼司氏は,20年を超えてフランスでの学究生活を経験し,研究者として初期のブルバキメンバーの多くと個人的に親交をもっておられる.著書『複素解析』と『線型代数講義 — 現代数学への誘い』はいずれも,古典に対する深い理解と透徹した理論構成に基づいて書かれており,教科書の枠を超えて数学の奥深さを平易な言葉で綴った名著である.また,J. デュドネ『人間精神の名誉のために — 数学讃歌』,M. マシャル『ブルバキ — 数学者達の秘密結社』や,最近のJ.-F. ダース他『謎を解く人びと — 数学への旅』などの洗練された翻訳は,フランス数学への深い理解があって初めて可能となったものであり,日本の読者に現代フランスの数学の文化と思想に直に触れる機会を提供している.高橋氏の長期にわたる著作活動は,数学文化の架け橋として日本の数学界にとって貴重な貢献であり,出版賞に相応しいものである.