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日本数学会

理事長からのご挨拶

大変革時代に応える数学研究の発展

prof.kotani

日本数学会 理事長小谷 元子

日本数学会は、前身である東京数学会社が1877年に設立された学会です。世界においても、専門家集団による最初の学会は1831年に設立されたイギリス科学振興協会ですので、国際的に見ても伝統ある学会と言っても過言ではありません。現在、約5000人の会員を擁し、「数学の研究を盛んにし,またその普及をはかり,関係諸部面とも協力して学術文化の向上発展に寄与する」ことを目的した活動を行っています。特に年会・秋季総合分科会及び日本数学会季期研究所(MSJ-Seasonal Institute)、高木レクチャーなどの学術的会合の開催、学会誌及び図書の刊行や顕彰事業、また、一般市民の皆様に、数学の楽しさを実感していただくための市民講演会や藤岡おもしろ数学教室の実施、さらに教育の改革あるいは数学研究の基盤整備などわが国の数学的な力の向上のための提言などを行っています。2015年は小平邦彦、伊藤清の生誕百周年記念事業を執り行っていきます。近年は、国際的な交流事業にも力をいれており、大韓数学会や台湾数学会との交流、さらに、国際数学者会議(International Congress of Mathematicians: ICM )、アジア数学会議(Asian Mathematical Conference: AMC)への参加などを通して、数学研究の推進と普及に努めています。昨年、国際数学連合(International Mathematical Union: IMU)に本学会員である森重文氏がアジア地域から初めての総裁として選ばれたことはうれしいニュースでした。

学術を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。人類が直面する課題は地球規模かつ複雑になり、これまで以上に最先端科学が分野を超えて解決に貢献することが期待されています。特に、インターネットやコンピュータの発達により「第4次産業革命」ともいわれる大変革が始まり、これまでとは質量ともに異なる情報化社会が始まりつつあります。数学は人類の歴史の始まりから常に学術・科学技術の基礎を提供してきましたが、高度情報化時代の共通基盤となる数学の果たす役割はこれまで以上に大きくなる予感です。このような変革の時代だからこそ、多様なアイデアを育てることが大切です。数学独自の課題を追究し学術を深化・展開するとともに、高度情報化時代に応える数学研究の推進や国民が情報を正しく判断しリスク管理をするためのリテラシーとしての数学の普及にも努めます。

数学会は、このような活動を中心に社会への貢献を続けていこうとしております。皆様のこれまでのご支援にあつくお礼を申し上げるとともに、より一層のご指導をお願いもうしあげます。

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