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日本数学会

理事長からのご挨拶

数学会が受け継ぐもの

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撮影:河野裕昭氏

日本数学会 理事長寺杣 友秀

当会、一般社団法人日本数学会は、1877年に前身である東京数学会社が設立されて以来、いくつかの形態を経て、今日の一般社団法人にいたっているわけですが、発足当時から一貫して数学の研究者の情報交換の場としての役割を果たし、数学あるいは数理科学の発展と振興の一翼をになってきました。その間、大学あるいは研究所をはじめとする教育、研究をとりまく環境も世の中の流れとともに大きく変化してきており、数学者や数学会が社会から求められる描像も刻々と変化してきております。

とくに、1990年代の大綱化に象徴される大学改革においては、多くの大学により、大学院が拡充され、それにより、学者と研究、学生そして社会とのかかわり方も変化してきました。昨今よく耳にするSDGsなど、世の中が変われば、言葉も変わり、言葉が変われば、人の意識も変わります。もちろん私たち数学者たちもその流れについていかざるを得ないわけですが、そういった流れの中にあって数学者たちの変化の度合いは、他の科学に比して緩やかである印象をうけます。それは数学者は概して物事の本質は何かということをじっくり考える習性によるものではないかと思います。朝永振一郎の詩「科学の花」にあるように「よく観察してたしかめ、そして考えること」の重要性を感じている方は私だけではないと確信しています。

さて、数学会の活動のなかでもとりわけ重要なものとしてあげられるのは、分野をこえてお互いの研究の情報を交換するための総合分科会(学会)の開催、欧文、邦文の雑誌などをはじめとする出版事業、数学の発展に寄与のあった方々を広く世に知らしめる、顕彰事業などが挙げられます。また、国際社会、欧米やとりわけ東アジアとの関係において、日本の果たすべき役割も刻々変化しつつあり、そういったなかでの国際交流も大きな事業の一つとなりつつあります。これらの事業は数学会が力を入れてきたことですが、今後も持続可能であり続けるような方法で次の世代への橋渡しをすることこそ、いまなすべきことと思います。

当会において、世の中が変化しても変わらないのが、先輩たちから脈々と受け継がれている相互扶助の精神です。数学会の種々の活動、例えば会場の設定や雑誌のレフェリーなど、数学会のほとんどの活動は会員の皆様方のボランタリーな力によって支えられています。数学会の活動に協力されております方々に於かれましては、この場をお借りしまして、心からの感謝と敬意の念を顕したいと存じます。これまで築かれてきました先人たちの精神を受け継ぎ、継続していくために、微力ながらも尽力いたす所存ですので、今後ともご理解とご協力をよろしくお願いいたします。